コラム

Column

専門知識と積極的な「聞く姿勢」で
患者さんの“頼れるパートナー”となる

かもめ薬局

2023.07.01

かもめ薬局では、地域のみなさまに頼りにされる薬局を目指して、スタッフが日々研鑽を積みながら業務に取り組んでいます。今回は、かもめ薬局旗の台店で薬局長・管理薬剤師として働く入社14年目の野北侑理恵さんに話を聞きました。野北さんは「外来がん治療専門薬剤師」の取得を目指して邁進中です。

かもめ薬局旗の台店 薬局長・管理薬剤師

野北 侑理恵

「外来通院のがん患者さんが安全に治療を受けられるよう、薬剤師としてサポートしたい」

Q. トライアドジャパンに就職した理由と、入社後の経歴を教えてください。

野北: 私は2009年にトライアドジャパンに入社しました。就職活動のとき、薬局だけではなく治験事業も手掛ける会社ということで興味を持ちました。

幅広い業務ができることがとても魅力に感じました。入社後は複数の店舗で勤務し、学校薬剤師も経験しました。産休・育休を経て2022年4月に復帰し、現在はかもめ薬局旗の台店で薬局長・管理薬剤師として勤務しています。

旗の台店は大学病院の近隣に位置する薬局で、がんの患者さんも多く、在宅で療養する患者さんへの訪問指導も行っています。



Q. 日本臨床腫瘍薬学会の「外来がん治療専門薬剤師」の認定を取得するための研修を終えたそうですね。どのような資格なのですか?

野北:日本ではがん患者さんが増えており、近年は外来で化学療法を受ける患者さんも多くなっています。

外来化学療法では、治療後、患者さんは自宅に戻り、次回受診日までご自身で副作用管理などを行う必要があります。外来でも安全に化学療法が受けられるよう、がん化学療法の専門知識を持つ薬剤師の育成を目的に、専門薬剤師を認定する制度が「外来がん治療認定薬剤師制度」です。

「1か月の病院研修に安心して臨めたのは、先輩や同僚のサポートがあったから」

Q.どのようなきっかけで、外来がん専門薬剤師を目指したのでしょうか?

野北:かもめ薬局旗の台店は大学病院の処方箋を受けることが多い店舗です。がんの患者さんも多く、外来で化学療法を受けている患者さんの来院も少なくありません。そうした患者さんをもっとサポートしたいという気持ちは常にあったのですが、実は、がん患者さんに対して身構えていた時期がありました。

「私の言葉ひとつで、患者さんが傷ついてしまうかもしれない」という不安があったのです。

「薬剤師として、このままではいけない」と思っていたとき、以前から通ってくださっていている患者さんに、思い切って、副作用が出ていないかなど体調変化について確認したことがありました。

すると「食欲がなく栄養がとれなくて困っている」という悩みを打ち明けてくださり、栄養食のパンフレットをお渡ししたら、すごく喜んでくださったのです。それをきっかけにこの患者さんとの距離が近くなり、処方箋をお持ちでないときにも「栄養食を買いにきたよ」「今日の検査はこうだったよ」と、たくさん話してくれるようになりました。

この経験から、「十分な知識があれば、もっと適切なサポートができるはず。そうでなければ患者さんのお役に立てない」と気づきました。

より本格的にがんについて学びたいと思うようになり、外来がん治療専門薬剤師の認定取得を目指すようになったのです。

Q. この資格を認定取得するためには、1か月の病院研修が必要だと聞きましたが……。

野北:そうなんです。最初は、「店舗の業務はとても忙しいのに、1か月間も薬局業務を抜けてもいいのだろうか……」とためらう気持ちが強かったですね。しかし、その少し前、私が産休・育休を取得している間に上司が、同じ外来がん治療専門薬剤師の認定のための病院研修に行っていました。

それを聞いて「会社がしっかりサポートしてくれるんだ」と安心しました。

私の夫はもともと出張が多い仕事なのですが、新型コロナウイルス感染症の流行期には出張がほとんどなくなり、在宅勤務になりました。そんなとき先輩が「今なら子どもの保育園送迎などをご主人にサポートしてもらえるだろうし、チャンスなのでは?」と後押ししてくれて、研修を受ける決意が固まりました。

Q. そして育休から復職して2か月後に、病院研修を受けたのですね。

野北:研鑽を積むことに対して理解のある会社であったことが、最も心強かったです。そして、背中を押してくれた先輩と育児や家事を協力してくれた夫にも、とても感謝しています。

職場のスタッフが理解してくれたことも大きかったですね。私が店舗にいない1か月間は、他店舗からスタッフが来てフォローしてくれました。

上司も、「薬局のことは気にせずしっかり学んでおいで」と言ってくれて、とても励みになりました。

研修期間は、薬局業務で重要なメールが届いたらコンシェルジュ(薬局事務)に転送してもらう、業務報告を毎日送ってもらうなど、薬局長として店舗の様子をしっかり把握すべく、こまめに連絡をとるようにしていました。

「専門知識を持つことで、患者さんにより積極的に関われるようになりました」


Q. 病院では、どのような研修を受けたのですか?

野北:研修を受ける病院は、通いやすさと、病院での業務を実際に体験することを重視している点が決め手になり、順天堂大学医学部附属順天堂医院にしました。

具体的な研修内容としては、前期は混注を含めた抗がん剤の調剤や、レジメン通りに処方されているかの処方監査業務などを学びました。後期には、病棟での服薬指導を見学したり、外来がん化学療法室での服薬指導を学びました。

Q. 病院研修で印象的だったことはなんですか?

野北:がん化学療法では、たとえ経験が浅い薬剤師であっても安全性に関わる説明は同じレベルでできなければなりません。

特にがん患者さんの場合、処方された薬がどのような治療のためか、どのような副作用があるか、その初期症状や対処法などをしっかり説明し、理解していただく必要があります。

一度に多くの説明を理解するのが難しい患者さんには、重要なことから説明したり、治療のフェーズに合わせて気をつけるべきことを説明したりなど工夫します。受けている薬物治療について十分に理解していただくことが薬剤師としての基本ですが、特に抗がん剤治療の場合、それができなければ患者さんの安全性を守ることはできません。

薬剤師の責任の重さを改めて実感しました。

Q. 研修での学びは、実際の業務に生かされていますか?

野北:はい、患者さんへの関わり方が変化しました。病院研修に行く前の私は、がん患者さんに対して「これを話していいのか」「聞いてもいいのか」 と、とても神経質になっていたと思います。

しかし研修を受けてからは意識が変わり、「患者さんの安全性を守り、化学療法を継続していくためには、確かな専門知識をもった上でしっかりとコミュニケーションをとり、関係性を作っていくべきだ」と考えるようになりました。

もちろん、話したくないことを無理に聞き出すことはしませんが、積極的に質問できるようになりましたね。それは病院研修で、患者さんが病院でがんの外来化学療法をどのように受けているのかを知れたことが大きいと思います。

がんや化学療法に関する知識を持った上で、専門知識に根差した服薬指導やフォローアップができるようになると、患者さんの暮らしに寄り添うことができるようになると思います。まだまだ勉強中ですが、少しずつ自信がもてるようになってきたところです。

「努力することでキャリアを積める、そんな仕事です」


Q. 病院研修を受けて、ご自身のケアが変わったと感じたケースはありますか?

野北:目薬だけが処方されていてほとんど会話をされない患者さんがいらっしゃったのですが、お薬手帳を見るとがんの外来化学療法を受けていることがわかりました。

手帳に記載されているレジメンには、口渇が発現する薬が含まれていたため、「最近、口の渇きなどはありませんか?」と聞いてみたのです。すると「口がすごく渇くし、食事もとりづらい」と訴えられたので、口腔内の乾燥を防ぐ口腔ジェルのサンプルをお渡ししました。

それ以降、頻繁に薬局に立ち寄ってくれて、だんだん笑顔が増えて会話が弾むようになりました。「この患者さんの助けになれたんだ」と感じて、うれしかったですね。

以前の自分だと、目薬をお渡しするだけで終わっていたと思います。薬の特性を踏まえた一歩踏み込んだ質問をすることで、「この薬剤師は、がん治療のことをわかっているな」と感じて信頼してくれたのではないでしょうか。

「なにか困っていることはないですか?」といった当たり障りない声かけでは、患者さんからの信頼を得にくく、「大丈夫です」という返事しか返ってこないように思います。この経験から、知識をフル活用して患者さんのことをしっかり考え、その方の悩みをなるべく具体的に想像して声をかける大切さに気づきました。

外来がん治療専門薬剤師の認定取得のためには、病院研修の他に、がん患者さんをサポートしてより良い薬物治療につながった症例を10例集めて報告する必要があります。患者さんを丁寧にケアしながら、症例を増やしていければと考えています。

Q. 最後に、就職活動中の方々へメッセージをお願いします。

野北:トライアドジャパンは上司と距離が近く、相談しやすい環境です。私が病院研修に行けたのも、研修を受けた上司に具体的な話を聞けたというのが大きかったですね。

会社が認定取得を推奨していて、全面的にバックアップしてくれる体制が整っていることもあり、上司も同僚も、薬剤師としての力を磨くことを後押ししてくれました。そんな雰囲気の会社だからどんどん成長できるし、子育て中の社員や管理職も多いので、仕事と子育てを両立しやすい会社だと思います。

努力すればするほどキャリアを積めるというのは魅力ですね。働く環境や制度は、会社によってさまざまだと思います。就活中の皆さんにも、「ここでなら薬剤師として成長できる」と思える会社を選んでほしいと思います。

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