コラム

Column

訪問薬剤師は、患者さんと医療スタッフをつなぐ“かけ橋”

在宅医療

2022.05.28

かもめ薬局では、地域のみなさまに頼りにされる薬局を目指して、スタッフが日々研鑽を積みながら業務に取り組んでいます。今回は、かきおモール店で訪問薬剤師として働く入社5年目の北村美紀さんに、実際の業務内容や訪問薬剤師の魅力について聞きました。

薬剤師・かもめ薬局かきおモール店

北村美紀

「薬局を志望したきっかけは、実習で出会った先輩薬剤師でした」

薬学生は就職時、病院薬剤師と薬局薬剤師のどちらを目指すかで迷うことが多いと思いますが、なぜ薬局を選んだのでしょうか?

北村:きっかけは、薬局での実務実習で出会った先輩薬剤師です。調剤や患者対応をしっかり行いつつも周囲への配慮を怠らず、一目で“仕事ができる方”という印象を受けました。

薬局が混んでくると実習生は手持ち無沙汰になりがちなのですが、そんなときには必ず気づいて声を掛けてくれるんです。この先輩のような薬剤師になりたいと思って、薬局で働こうと決めました。

Q. かもめ薬局に入社した決め手を教えてください。

北村:在宅医療に力を入れていた点ですね。もともと在宅医療に興味があったのですが、他の薬局は相当な経験を積んでからしか在宅患者さんを担当できなかったり、外来業務と兼任で数人しか担当できないという薬局がほとんどでした。

そこで、早い段階から在宅医療に携われて、在宅業務を専任で担当している薬剤師が多いかもめ薬局に入社を決めたんです。いまは、高齢者施設に入居されている患者さんを50〜60人、個人宅の患者さんを30人ほど担当しています。

「患者さんの背景を深く知ったうえでサポートできる。それが訪問薬剤師の魅力」

Q. 外来業務を担当したのち、専任の訪問薬剤師として勤務されていますね。現在の業務内容について教えてください。

北村:個人宅の患者さんの場合、訪問頻度はまちまちです。たとえば癌ターミナルの患者さんなどでは体調の変化が激しく、薬が次々と変更となることもあります。一方で、症状が安定していて服薬アドヒアランスが良好な方には月1回の訪問がほとんどです。

高齢者施設では、医師の訪問診療に同行することが少なくありません。医師と看護師、施設の看護師とかもめ薬局の薬剤師とで施設内の各部屋を“回診”します。同行すると医師の治療方針を直接確認でき、処方変更の理由などがより詳しく把握できます。時には医師からどの薬がよいかなどの相談があったり、自己管理が難しい患者さんについて、服薬時点が1日2回の薬を1日1回の薬に変更を提案することもあります。服用については施設のスタッフがサポートしますが、それでも1日の服用回数が少ないほうが、患者さんにとっても服薬介助するスタッフにとっても負担が少なくなります。施設のスタッフの負担を減らせば、よりこまやかに患者さんに対応することができますので、結果的に患者さんのためにつながります。

Q. 患者さんの立場に立って、細やかな配慮で投薬面のサポートをされているのですね。

北村:医師が考えるベストな治療がしっかり実現されるように、薬剤師としてお薬のことについては積極的に関わるようにしています。

たとえば、先生の診察に同行していて、患者さんの体調に何らかの変化が見られ、薬の副作用が疑われるようなケースもあります。そうした場合には、薬剤師ならではの気づきが患者さんの治療に生かせるよう、先生にしっかりお伝えするようにしています。これは在宅医療に限らずですが、つねに患者さんに寄り添い、小さな変化でも見逃さないように心掛けています。

先日ある患者さんのお宅を訪問したときに、患者さんから「口内炎ができた」と訴えをいただきました。実際に見せてもらうと、明らかに口内炎とは違う様子で……。

在宅医にすぐ報告したところ、翌日臨時の訪問診療となり、患者さんは適切なタイミングで診察を受けることができました。私たちは医師ではありませんから、診断はできませんが、変化をいち早く拾い上げて医師の診断の助けとなる情報を報告することができます。目の前にいる患者さんやご家族のためにできる限りのことをする。そうするなかで信頼関係がつくられていくのだと思います。

薬剤師として少しでも患者さんの役に立てたと実感できたときには、「訪問薬剤師の仕事をしていてよかったな」と心から思いますね。

Q. 訪問薬剤師の仕事で、どんなところが魅力ですか?

北村:深く患者さんを知れること。それこそが訪問薬剤師の醍醐味だと考えています。

病院薬剤師の場合、入院中だけの短い関わりとなります。薬局でも外来だと、限られた時間の中での付き合いになり、関係性を深めにくいといえます。

しかし訪問薬剤師は、担当する前に患者さんの既往歴や現病歴、ADL(Activities of Daily Life;日常生活動作)などが把握できますし、ご家族のことを含めて患者さんの背景をある程度知ったうえでお薬のサポートができます。ご家族から「うちのお母さん、北村さんが来る日は元気だからうれしい」と喜んでもらえたことがあって、そんなときはとてもうれしくなります。

また、ご自宅に訪問することで初めて分かることも多いです。たとえば朝起きるのが遅く朝のお薬が飲めていない在宅患者さんに対しては薬剤の変更を提案するなど、一人ひとりの生活に即して薬剤師の職能を発揮することができます。
患者さんの生活に根ざした支援ができることが、訪問薬剤師の最大の魅力だと思います。

「“相手のお役に立てた”と感じたときに、この仕事をしていてよかったとつくづく思います」

Q. 逆に、大変に感じることはありますか?

北村:生活に関わっていく仕事ですから、関係性を構築するまでが大変だと感じることがあります。

すべての患者さんがはじめから気持ちよく訪問を受け入れてくれるわけではありませんから。ご自宅というプライベートな空間にお邪魔することになるので、警戒されてしまうこともたくさんあります。

Q. 患者さんにも、戸惑いがあるのかもしれませんね。そういったときは、どのように対応されているのでしょうか?

北村:焦らず時間をかけて、明るく接することを心がけています。

対応が難しい患者さんには、まずはその方が「されて嫌なこと」を探るようにしています。たとえば、急にスケジュールを入れられることが苦手な患者さんには、早めに訪問日時を設定し、その時間は絶対にずらさないようにするといった配慮をします。

その人の「嫌なこと」を探しながら何度か訪問するうちに、徐々に機嫌がいい日が増えてくるんです。「最初に心を閉ざしていたのはなんだったんだろう?」と思うくらい、仲良くなれる方もいますよ(笑)。

「ひとりの薬剤師ではできないことも、他職種をまきこめば可能になる」

Q. 薬剤師として働くなかで、大切なことはなんでしょうか?

北村:病状が安定していて服薬アドヒアランスが良好であれば問題ないのですが、どうしてもうまくいかない患者さんもいらっしゃいます。そんなときには、一包化や薬剤の変更の提案、在宅患者さんであれば訪問回数を増やすなどの手立てを考えます。薬剤師として、医師の治療方針どおりうまく治療が進むようサポートすることが大切だと思っています。

また、他の職種とのネットワークをしっかり築くことも大切だと思っています。薬剤師は患者さんに近い存在ですが、もちろん薬剤師だけではできないことも多い。訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなどほかの職種の方を巻き込んで、チームで患者さんを支えていくためのハブ役、あるいはかけ橋のような存在になれればいいなと思います。

「外来と在宅の両方を経験したからこそ、患者さんのためにできることがある」

Q. 薬剤師として、これからどんなキャリアを描いていきたいですか?

北村:これからも訪問薬剤師として在宅業務中心でいくのか、外来業務に戻るのか、いままさに模索しているところです。外来業務に戻れば在宅での経験を生かせますし、研鑽を積んで管理薬剤師を目指すなど、キャリアアップを図ることも魅力に感じます。一方で、訪問薬剤師として在宅の専門知識やスキルをさらに磨きたい気持ちもあります。

現在の仕事に向き合いながら、じっくり考えていくつもりです。

Q. 最後に、かもめ薬局への就職を考えている方へメッセージをお願いします。

北村:かもめ薬局は大きな組織ではなく、風通しのよい会社だと思います。在宅を担当することになった当初は不安でいっぱいでしたが、在宅のエキスパートともいえる先輩がたくさんいますし、今は外来薬剤師として活躍していても在宅を経験している先輩が多いので、いろんな方に相談できて安心できました。

在宅医療に携わりたい人や、かかりつけ薬剤師として頑張りたい人には、とてもよい環境だと思います。

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